REPORT
2026年度「すみだおとな創造部―“まちこうば”と話す会」第2回開催  大川硝子工業所
26.10.02

2026年度「すみだおとな創造部―“まちこうば”と話す会」第2回開催 大川硝子工業所

「ないなら、別の方法を考える」――110年企業・大川硝子工業所が切り拓いた、新しい商機

 

「ガラス瓶」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。
飲料や食品を入れる容器。使い終われば、資源ごみとして回収されるもの。
日常的に使っているだけに、改めて考える機会は意外と少ないかもしれません。
8月28日にSICで開催された「すみだおとな創造部」第2回に登壇したのは、株式会社大川硝子工業所の代表取締役・大川岳伸さんです。

 

1916年、押上で創業した同社は、今年で110周年。
現在は国内生産のガラス瓶を中心に、企画・販売、新規容器の開発、印刷などを手がけています。
110年続く老舗企業と聞くと、順調に歴史を重ねてきた会社を想像するかもしれません。
しかし、大川さんの話は、そんなイメージをいい意味で裏切るところから始まりました。

 

 

 

経営を知らないまま家業へ。待っていた危機

 

大川さんが家業に入ったのは2008年。
外での仕事を経て会社に戻ったものの、当時は家業についてほとんどわからなかったと振り返ります。
さらに、その年と翌年に、主要な売り先と仕入れ先が相次いで倒産。
会社の大きな危機が訪れます。
起死回生で、新商品を開発したくてもできません。
ガラス瓶は金型だけで数百万円、製造ロットは何万本の世界。
そこに割り当てる資金がなかったのです。

 

加えて、業界も厳しい環境にありました。
人口減少やペットボトルへの移行、容器の多様化などを背景に、国内生産量は1990年の261万トンをピークに減少の一途をたどり、直近では91.3万トン。
従来と同じことを続けているだけでは先が見えません。

 

では、どうするのか?
大川さんの試行錯誤が始まりました。

 

 

 

新しくつくれないなら、すでにあるものを見直す

 

大川さんが目を向けたのは、祖父の代につくられた雑貨向けのガラス瓶でした。
商品の「パッケージや見せ方、伝え方」などの「デザイン」を変えることで、新しい価値を生み出せるのではないか?

 

そこで、デザイン知識のなかった大川さんは、デザインを学ぶことから始めました。
デザイン専門学校で、約10年間、週に一度、学生との商品開発に参加。
プロの講師や若い学生たちと接しながら、デザインの考え方を吸収していきました。

 

 

 

こうして祖父の代の商品をリブランディングし、2017年にFamiliarシリーズをリリース。

さらに、2019年には社内にグラフィックデザイナーを迎えました。

 

大川さんにとってデザインとは、単に商品の外見を整える行為ではありません。

どのように見せるのか。どんな場所で売るのか。どんなブランドと並ぶのか。会社の歴史や商品の背景をどう伝えるのか。

「もの単体」で競うのではなく、その周囲にあるものまで含めて価値をつくっていく。

これらすべてが、デザインなのです。

 

 

 

墨田区から、ロンドン、ニュージーランド、ヘルシンキへ

 

大川さんはデザインを活用し倒すことで、新しい商機につなげていきました。
その先にあったのが海外です。
現在、大川硝子工業所は、雑貨やアパレルなどにも販路を広げ、海外売上は全体の10%に達しているといいます。

 

その方法も独特です。
大規模な海外展示会ではなく、現地のライフスタイルショップなどと組んだポップアップを選択。
ロンドン、ニュージーランド、ヘルシンキなどへ自ら足を運び、生活者に近い場所で商品を見てもらいます。
ニュージーランドでポップアップを開催した際には、現地での活動がInstagramを通じて広がり、滞在中にフランスやベルギーなどからも取引の問い合わせが届きました。

 

 

 

 

ないものを嘆くのではなく、別の方法を考える

 

資金が限られているなら、既存の商品を見直す。
自社にデザインの知見がないなら、学べる場所へ行く。
業界の中だけでは価値が見えにくいなら、外へ出て異なる人たちの目で見てもらう。
大規模な海外展開が難しいなら、小さな方法から始める。
大川さんは、その一つひとつを徹底して考え、行動し、業績をV字回復に導いてきました。

 

 

 

 

一社の話から、自分たちの仕事を考える

 

質疑応答では、商品開発に取り組む参加者から「なかなか商品化までたどり着けない」という悩みも語られました。
また、現状に適したところから始める取り組み方に共感する感想も寄せられました。

 

 

一社の取り組みをきっかけに、自分たちの仕事や会社の可能性を考えてみる。
そんなところにも「すみだおとな創造部」の面白さがあります。

 

 

墨田区には、長い歴史や技術を持ちながら、時代に合わせて新しい挑戦を続けている事業者がいます。
その面白さは、実際に話を聞き、人柄に触れ、考えや試行錯誤まで知ることで、初めて見えてくるものがあります。
次は、どんな墨田区の会社と、どんな人に出会えるのでしょうか。
次回もお楽しみに!

 

 

すみだおとな創造部―“まちこうば”と話す会
第2回 大川硝子工業所
実施日:2026年8月28日
レポート:國場美乃(ライター/SIC会員)
主催:墨田区産業共創施設SUMIDA INNOVATION CORE(SIC)

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